活動日誌・お知らせ

「歴史的景観を保全するための具体的施策(素案)」説明会に参加して

昨日、京都市が主催して行った「歴史的景観の保全するための具体的施策(素案)」の説明会に参加し、京都市に対して、下鴨神社や仁和寺の開発などを推進する立場にたってきたことを反省してもらいたいといったうえで、住民参加の規定について質疑・応答の上で、住民参加規程を盛り込んでほしいという提案を行わせていただきました。

「未然」に、何が起きるを想像して、住民合意を取り付けて「地域景観づくり協議会」を設置して、任意の基準を追加して、新規参入の住民や業者に対してそのルールを守るように要請する・・・という枠組みだけが住民参加の形式であることがわかり、正直、京都市には景観を守ろうという本気の姿勢がないことを痛感しました。

仁和寺の事例を京都市は引き合いに出しましたが、仁和寺の場合には、京都市の「許可」のもと業者が合法的に景観を文化財の安全を脅かす計画を行ったことに対して住民が反対運動をおこし、業者側が断念することによって、景観が守られ、その経過の中で周辺町内会の団結が生まれて「協議会」が成立できた・・・という経過がありました。

そうした苦労を抜きに、一般的に、「未然」に何が行われるかを「想像」「想定」して「協議会設立」を呼びかけるなどということは現実的にはほとんど難しいと言わざるを得ません。もし「何かの基準」を考え合意できたとしても、それを守るかは任意でありペナルティもないということでは、住民のがんばりは空振りになる恐れすらあります。

行政が1年以上にわたって、下鴨神社側と密室協議を行い、ほぼ計画ができてから公開し、手続きに入るというやり方を踏襲して、今回「景観デザインレビュー」なるものが提案されていますが、このプロセスには住民は一切参加できませんでした。

例えば、今回も多くの世界遺産がこの制度の対象とされておりますが、そうした世界遺産をユネスコ世界遺産委員会ではどのようにして守ろうとしているでしょうか。日本含め各国政府が合意した世界遺産を守る重要な手段とは何でしょうか。

その答えは、ユネスコ世界遺産委員会で2012年に確認された「京都ビジョン」に示されています。

そこでは、世界遺産の保護における住民参加の大切さを以下のように規定している。

(外務省HPより以下引用)

  • 世界遺産条約履行のための戦略的目標に「5つめのC」(注) としてコミュニティが掲げられているとおり,世界遺産の保護のためには,地域社会と先住民を含むコミュニティが重要な役割を果たしている。
  • 世界遺産条約が,その目的の一つとして,遺産に「社会(コミュニティ)生活における役割」を与えることを掲げている(第5条)ことから,コミュニティは遺産の保存・管理に十分に参画する必要がある。

ところが、今回京都市がうちだした新施策の中では、上述の通り、住民参加規定は形式的なものになってしまっています。

世界遺産委員会で合意した水準の条例改正へとつなげてこそ、今回の新施策は、世界遺産を守る上で有効な力をはっきできると考えます。

今回、京都市が改正を検討しようとしている「京都市眺望景観創生条例」「京都市市街地景観整備条例」「京都市風致地区条例」に関して、住民参加規定を明記するようにもとめ、事前に住民に情報提供がされ、住民が意見を表明し、その意見の反映を行わなければいけないという趣旨を盛り込ませるべきと考えます。

ぜひ、皆さんもパブリックコメントに積極的に応募しましょう。

(更新日:2017年07月27日)