活動日誌・お知らせ

2021年2月24日・とがし豊代表質問(後半)

次に、気候危機、再生可能エネルギーの普及について質問します。

気候に関する政府間パネルIPCCの1.5℃特別報告書は、工業化以前と比べて地球の平均気温がこのまま2℃上昇すれば、サンゴ礁の99%が消失、年間漁獲量が300万トン超える減少、マラリア等の感染症の発生範囲の拡大、洪水の影響を受ける人口が170%増加などの生態系・人類社会への影響を明らかにし、気温上昇を1.5℃以内に抑える必要があると警告。そのためには、少なくとも二酸化炭素排出量を2030年までに45%削減し、2050年頃には実質ゼロにする、社会のあらゆる側面において前例のない移行が必要と指摘しています。菅首相は昨年10月26日、「2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにする」と表明しましたが、2030年までの目標としては「2013年比で26%削減」にとどまり、あまりにも不十分です。

とりわけ、日本で排出される二酸化炭素のうち、エネルギーを起源とするものが9割を占める中、政府のエネルギー基本計画における2030年までの再生可能エネルギー普及目標は、すでに18%の到達にあるものを22%~24%まで、あと10年かけて数パーセント増やすだけという大変消極的なものです。その根底には、原発や石炭火力に依存し続けようとする姿勢があります。

石炭火力発電は、他の化石燃料を使った発電と比べても大量の二酸化炭素を排出することから、どんどんとその割合を減らすべき発電方法です。ところが、日本では建設中・計画中の石炭火力発電所が17基もある状況であり、脱石炭の世界の流れに逆行しています。

東京電力福島第一原発事故からもう10年もたちましたが、福島県外避難は約2万9千人、核燃料の回収すらできておらず、汚染水問題は深刻です。安倍・菅政権が進めてきた原発輸出は経済性の面からことごとく挫折。関西電力大飯原発3・4号機をめぐっては、昨年12月、大阪地裁は、原子力規制委員会の判断は地震の想定で必要な検討をせず「看過しがたい過誤、欠落がある」と認定し、「世界最高水準の規制基準に適合」なる政府スローガンも、根底から覆されました。また、九州電力管内では、原発からの電力供給を優先するため、太陽光発電に対しての出力抑制が強いられるという事態も起こっています。

原発ではなく、再生可能エネルギーにこそ力を注ぐべきです。

そこで4点、提案いたします。

第一に、政府に対し、第6次エネルギー基本計画の策定にあたって、2030年の電源構成について再生可能エネルギーの比率を45%以上に引き上げさせるとともに、原発については即時ゼロに改めること求めるべきです。また、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロにむけて新規石炭火力発電建設計画の中止と既存石炭火力の計画的な廃止を盛り込むよう求めるべきです。市長の認識はいかがですか。

第二に、京都市は2030年までの温室効果ガス排出削減目標を40%以上としていますが、IPCC1.5℃特別報告書の水準を目指すべきです。

そのためにも、太陽光・太陽熱、木質バイオマス、地中熱、小水力など再生可能エネルギーの種類ごとに、年次ごとの数値目標を掲げ、達成にむけて配水の陣で臨むべきです。
例えば、太陽光発電の推進です。京都市が示している計画案では、今後10年間で1万5千件の太陽光パネル設置を掲げ、初年度は1000件の普及のための予算が計上され、残る9年で1万4千件普及しなければなりません。太陽光発電で生み出された電気の買取価格が政府により低く抑えられる中、京都市内の2019年度実績はわずか347件にとどまったことを考えると、今まで通りの取り組みでは目標達成はかなり困難です。太陽光発電の飛躍的な普及に向けて、京都市内の住宅地の屋根の形状・大きさや住民に対してどの程度のインセンティブがあれば、太陽光パネルの設置が進むのか実態調査を行い、それをもとに、国に固定価格買取制度の改善を求め、京都市としても助成制度の充実を図るべきです。南向き以外の屋根にもパネルを広げて設置することも含め、どうすれば、2030年目標達成がかなうか、真剣な検討を求めます。

第3に、太陽光発電・熱利用はじめとする各種再生可能エネルギーを普及促進していくにあたって、東京など他地域の資本に頼るのではなく、地域金融機関と連携し、京都の人・もの・仕事が循環する地域循環型のグリーンリカバリー・モデルの構築を求めます。
第4に、自然エネルギー100%の地域、職場、学校をどんどん作っていく、その率先垂範として「京都市公共建築物低炭素仕様」を抜本的に改訂し、公共建築はRE100(再生エネ100%)の立場ですべての計画を見直すこと、場合によってはそれ以上の最大限の発電量を確保する取り組みを求めますが、いかがですか。

次に、京都の景観と住環境を守るために、3つの提案をいたします。

第1に、ホテル等の宿泊施設の立地規制を求めます。
京都市内ではコロナ禍である今もホテル進出に歯止めがかかっていません。100室以上の規模のホテルだけでも、1月末時点で28施設5039室が新規開業を予定しています。ホテル等のさらなる進出は住環境やコミュニティの継続性さえ奪いかねず、不安の声が上がっています。また、地場に根付いて長年営業されてきたホテル・旅館関係者からも「市長のホテル誘致策で京都のホテル・旅館業は厳しい経営においやられてきたが、そこをコロナ禍が襲った。東京・外国資本などのホテルに学校跡地まで差し出すのはおかしい」という声がよせられています。宿泊施設拡充・誘致方針、上質宿泊制度は撤回し、立地規制を行うこと、小規模宿泊施設についても管理者常駐を義務化し、旅行客の安全と地域社会と調和のとれた宿泊業となるように、京都市の政策転換を求めます。いかがですか。

第2に、住宅宿泊事業についてです。

昨年9月にも左京区吉田地域の町内会から第一種低層住居専用地域での住宅宿泊事業の規制強化を求める陳情が出されました。現状の制度の枠組みが市民の暮らしを守る上で十分ではないことは明らかです。和歌山県では、住宅宿泊事業の届け出には隣接住民の同意が必要という条件をつけることで、住環境と調和する事業となるよう工夫されています。京都市においても、住宅宿泊事業の届け出にあたって隣接住民の同意を義務づけるべきです。いかがですか。

第3に、世界遺産に象徴される京都の豊かな景観と住環境を守る仕組みをつくることです。

世界遺産条約は、人類にとって「顕著で普遍的な価値」を有する世界遺産について、条約締約国が自国の有するすべての能力を用いて「将来の世代へ伝えることを確保する」ために「最善を尽くすものとする」と定めています。
ところが、京都市は、二条城では世界遺産内にある樹木を大量に伐採して観光駐車場にかえ、下鴨神社境内・糺の森の一部をつぶし富裕層向けマンション建設を容認。仁和寺門前では、建築基準法の例外規定を使い市長権限で大規模ホテル建設を進めようとしています。次期観光振興計画が検討されていますが、どのように開発圧力から世界遺産を保護するかについての視点が抜けています。2017年7月の第41回世界遺産委員会では、世界遺産の保護に関する議論が行われ、その第7議題・決議第40項として「市民社会との構造化対話のイニシアティブを評価し、市民社会が文化遺産の保全に一層貢献する可能性を引き続き探求することを奨励する」という文言が追加されました。

現在、文化庁のもと京都市等が作業を行っている「世界遺産・古都京都の文化財」包括的保存計画策定にあたっては、この世界遺産委員会での決議を十分に反映し、「世界遺産・古都京都の文化財」の保護に関して、幅広い市民社会・地域住民の参加の仕組みを作るべきです。観光振興計画においても世界遺産の保護を明記することを求めます。いかがですか。

最期に、左京区・北山エリアに関して市長に要望します。

昨年12月、京都府は旧資料館、植物園、府立大学等の敷地全体を再開発する「北山エリア整備基本計画」を発表しました。資料館跡にシアターコンプレックスや賑わい交流施設、府立大学体育館は1万人収容のメインアリーナを備えた施設に建て替え。植物園の運営に不可欠なバックヤードの一部を壊して、アリーナと賀茂川をつなぐ動線に様々な商業施設を作る計画です。アリーナ建設だけでも150億円と試算されており、この計画全体では数百億円に上ると推測されますが、それらの施設を民間企業が企画・運営するとされています。住民からは「北山エリアの閑静な住環境が壊されるのではないか」という声があがり、関係者からも「府立大学の学生たちが授業や課外活動で使える日数が制限されるのはおかしい」「閑静な住宅街と共存しながら国際的にも高い評価を得てきた植物園本来の役割が損なわれるのではないか」など、疑問の声があがっています。計画では「都市計画の側面」からも「検討」するとされており、京都市の責任も問われることが想定されます。税金の使い方、学生の学びや周辺住民の住環境にもかかわる問題として、広く市民の声をきき、住民・市民が主役の計画に改めるよう知事に働きかけることを要望いたします。以上で、代表質疑を終わります。ご清聴ありがとうございました。

(更新日:2021年02月24日)