文部科学省は、急増するいじめ・不登校対策に対して、新年度予算案で70億円の対策をくんだ。各小中学校に1人のスクールカウンセラーの先生が週1日だけ学校に滞在する程度(小学校は週1回3時間、中学校週1回4時間を基礎に自治体の申請状況で割り振り)で予算が組まれている。これに、中学校区に1人のスクールソーシャルワーカーが加わる。
■週1日8時間でも不十分なのに・・・
文部科学省の考える基準モデルと比べれば週1回8時間スクールカウンセラーが配置される京都市はずいぶんましなほうだが、それでも全く不十分。国全体で考えたとき、この70億円では、とても、不登校やいじめで追い詰められている子どもたちを支え寄り添って解決を図る、学力をつけることなど難しいといわざるを得ない。さすがの文部科学省もこのままではダメと思っているのか、先進的調査研究の委託として4100万円を別途計上。SNS相談の研究をしたり、自殺予防の研究をしたり、あるいは、全国のなかで一か所だけでスクールカウンセラーとソーシャルワーカーの常勤化の実験を行うという。京都市にもこれに応募するだけの決断でもって子どもたちの悩みに答えてもらいたいものだ。
■お金がないといいながら、なぜ、GIGAスクール?
いやいや、お金がないのだから仕方がないと反論があるかもしれない。しかし、この2月の京都市議会に、GIGAスクール構想のための設備投資として24億円の予算が計上された。うち半分は国の補助で、京都市が12億円の借金(市債発行)をしてお金を工面する。1人1台のパソコンを配備して一人一人に応じた教育を施すための構内LAN敷設費用として計上される。今後、2021年以降にパソコン端末の予算が追加で地方に降りることになる。が、それらの維持管理・通信・光熱費などのランニングコストは今のところ自治体負担。京都市はランニングコストについて国に対して予算要望をしていると答弁したが、結局それは、従来の教育予算に食い込み圧迫してくることになる。
今でも十分PCはある。現場に必要なのは先生
IT教育は必要だ・・・という意見もあるかもしれない。実は、既に小中学生の3人に1台のパソコンが各学校に配備されている。スマホやタブレットとの付き合い方、ネットとのかかわり方など、ITリテラシーは十分今の状況でも教えられる。なので、GIGAスクール構想をしなくても別にいいのだ。
■いじめ・不登校の子ども・家庭をとりのこさないで
さて、お金の話に少し戻る。今回、このGIGAスクール構想で京都市に配分された予算は12億円、国全体では2318億円に及ぶ。なんと、いじめ不登校対策の33倍。日経によれば、パソコン端末の国内市場をもう一つつくるほどの規模に成長する見込みだとか。今回の補正予算総額は2兆3086億円に及ぶので、実は、もっと腹立たしいことがこの補正予算には含まれているかもしれない。今回市議会の予算審議の関係で見えてきた事実だけをもってしても、「誰一人取り残さない」というSDGsの掛け声は、とても安倍政権には貫かれていないし、これにひたすら付き従う今の市政運営で、子どもたちを本当に一人一人大事にすることができるのか、疑問でならない。
■子どもたちの最善の利益のために政治はあるべき
このような問題意識のもとで、補正予算を審議する特別委員会に置いて、私は京都市の財政当局に対して、現場がやりたくても財政上なかなかできない真に必要な予算をひっぱってくるそういう努力が求められていると指摘をさせていただいた。教育産業やIT産業ではなく、子どもたちの最善の利益のために政治はあるべきだ。
(更新日:2020年02月21日)