日本学術会議の法人化法案に反対する意見書についての賛成討論
日本共産党 京都市会議員 とがし豊
2025年6月6日
日本共産党京都市会議団は、日本学術会議の法人化法案に反対する意見書を提案しておりますので、議員団を代表し賛成討論を行います。
現在、参議院で審議されている法案は、現行の日本学術会議法を廃止し、「法人化」のための新しい法律を制定するというものです。
そもそもの発端は2020年の菅首相(当時)による学術会議会員候補6人の任命拒否にあります。学術会議会員の首相任命が形式的なものであることは、歴代政権によって確定した法解釈でありましたが、それを一方的に覆しての暴挙でした。その任命拒否を学術会議の在り方の問題にすり替え、日本学術会議の度重なる懸念の表明を無視して、法人化ありきで強引に立法化を進めていることは重大です。
法案では、現行法の「科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」するという設立の原点を削除するものとなっています。このことは、戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術が戦争遂行に加担したことへの痛苦の反省の上に「学問の自由」を保障する憲法に立脚し、科学者の創意の下、平和的貢献を使命とした戦後の出発点を消し去るものであり許されません。
法案で示された新組織は、特殊法人として主務大臣(首相)の監督の下に置かれ、目的を達成する仕組みとして、①首相任命の監事を置き学術会議の業務を監査する、②内閣府に置く評価委員会が学術会議の活動に意見を述べる、③外部者でつくる会員選定助言委員会の意見を聴いて会員候補を選定するとしています。これは、日本学術会議を幾重にも政府の管理下に置くもので、科学者の代表機関として独立して職務を行うという現行制度の根幹を大きく損なうものです。しかも、この間の国会審議において、内閣府特命担当大臣は、特定の主張を繰り返す会員は解任できる旨の答弁をしており、政府の意に沿わない会員は、学識に関わらず「党派的」と決めつけ排除することを可能とするものです。まさに、「学問の自由」「思想信条の自由」へのあからさまな侵害であり、断じて認めることはできません。
さらに、特殊法人化によって、現行の国庫負担はなくなります。国からの補助金は行政改革による効率化の対象となり、財政基盤の多様化の名で、学術会議自らが国や産業界などから資金を集めなければならなくなります。その結果、学術会議の発する助言が政府の意向や産業界の利益におもねるものにならざるを得ず、科学者の代表機関としての役割は失われることになるのではないでしょうか。
歴代会長6氏は声明を発表し、国内外において日本学術会議のアカデミーとしての地位の失墜及び日本政府の見識への失望を招くと厳しく批判し、法案の撤回を求めています。日本学術会議も懸念を表明し、修正案も議決しています。同法案の修正、廃案を求める声明を発表した学会は、法案が閣議決定された3月7日以降5月31日までに105にのぼります。日本学術会議法案(仮称)を撤回し、ナショナルアカデミーとして日本学術会議の政府からの独立性と自主性を尊重すべきであります。
1933年、政府は、京都帝国大学の刑法学者・滝川幸辰(ゆきとき)教授が自由主義思想であるからと著作を発禁処分にし、大学自治の原則を踏みにじり、大学から追放する滝川事件を起こしました。政府は、その2年後、当時、憲法学上有力とされた天皇機関説が天皇絶対の「国体」に反するとして、その学説の代表者である美濃部達吉・貴族院議員・東京帝国大学名誉教授を弾圧しました。美濃部達吉氏は「学匪(がくひ)」と攻撃され、政府はその著作を発禁処分にし、公職から追放しました。このような権力の暴走、愚行が積み重なる中で、日本社会は理性の目を失い、破滅的な戦争への道に突き進みました。
そのような誤りを繰り返させないためにも、学問のまち京都においてこそ、学問の自由を高く掲げ、法案の撤回、日本学術会議の独立性を守れの声を上げなければなりません。同僚、先輩議員の意見書への賛同を呼びかけて、私の討論とします。ご清聴ありがとうございました。
賛成:日本共産党14人、無所属2人(平田議員、井崎議員)
反対:自民党、公明党、維新・京都・国民民主
民主市民フォーラム、改新京都、無所属
(更新日:2025年06月09日)