日本共産党京都市会議員団は、議第106号2023年度京都市一般会計補正予算案、議第90号・91号北庁舎新築工事請負契約の変更に反対し、議第98号・99号賠償額の決定について賛成を表明しておりますので、その理由を述べ、討論します。
今回の補正予算案は、2022年度決算での77億円の黒字を活用するとともに、新型コロナウイルス感染症対策予算のうち2類から5類感染症に移行したことをうけた臨時交付金の使い方の見直しを合わせて、編成されたものです。
福祉施設・子育て施設などにおける運営費・食材費に対する支援、学校給食食材費高騰への対応、京都観光の回復に伴う観光課題対策強化、中小企業・観光事業者・バスタクシーの担い手確保支援、商店街・ものづくり中小企業・伝統産業・農業への支援、中小企業への高効率機器の導入促進などは、不十分とはいえ、物価高騰の中で厳しい状況にある市民・事業者の暮らしと生業を支えうる上で必要なものです。
本補正予算案に反対する第一の理由は、行財政改革計画による負担増の見直しを一切行っていないからです。市長は、今回の補正予算編成の考え方として「今なお、急激な物価高騰などにお困りの市民・事業者の皆様へのさらなる支援」と述べていますが、ここには重大な見落としがあります。それは、市長自身が、「毎年500億円の財源不足」「財政破綻しかねない」と市民を脅して強行した「行財政改革計画」により53億円の負担増が行われており、京都市民は、コロナ禍・物価高・行財政改革による負担増の三重苦におかれている現実です。わが党は、質疑の中で、「行財政改革計画」による負担増の見直しを盛り込むべきではないかと質しましたが、当局は「黒字になったから戻すという考えではない」と開き直りつつも、「検証していく必要がある」と答弁しました。敬老乗車証の負担金2倍化で2万5千人の方が交付申請をあきらめ生活の足を奪われました。京都市が民間保育園への人件費補助金を13億円以上も削ったために3割の保育園で基本給の引き下げやボーナスカット等が行われました。そのことで実際に保育の現場を去る保育士が生まれていることをどう受け止めているのでしょうか。「検証してから」などと悠長なことを言っている場合ではありません。行財政改革初年度は実質102億円の黒字、2022年度は77億円の黒字、今こそ行財政改革計画による負担増・サービス削減を見直すべきです。
第二の理由は、今回の補正予算の最大の費目が、35億円の公債償還基金への計画外の積み立てになっていることです。高齢化がピークとなる令和24年(2042)の少し前の令和20年(2038)までの15年間で505億円を返済するとして単純に割り算し算定したとしています。公債償還基金に一定の考え方で積み立てることは必要な措置ではありますが、その回復の規模とスピードは市民生活との両立が大前提です。2021年度決算での187億円と今回の35億円を合わせて、2年で222億円に及びますが、コロナ禍の今、行財政改革計画によって53億円もの負担増・サービスカットを強いながら進めるべきではありません。そもそも、京都市財政が厳しくなった一番の原因は、京都市の身の丈にあわない規模とスピードで大型公共事業を進めてきた結果です。その返済の原資は投資的経費の抑制によって確保すべきです。
第3の理由は、妊産婦PCR検査の予算が不用額とされた点です。新型コロナウイルス感染症は収束せず、インフルエンザとの混合感染による重症化、後遺症などが問題となる中で、妊婦の安全・安心を守る対応とはいえず、本市独自でも継続すべき事業です。
第4の理由は、「京都・文化ファンドレイジング戦略推進事業」が、民間企業の寄付に頼り文化行政の責任を放棄するものであること、事業認定型は支援対象が営利企業の意向に左右されること、企業版ふるさと納税の仕組みを利用した市外企業優遇であること、通常支援型は昨年度200件を超える申請がありながら、その多くが支援を受けらていない、などの問題があるからです。
次に、議第90号および91号 新北庁舎新築工事請負契約の変更についてです。設計労務単価などの上昇への対応は必要なものです。しかしながら、庁舎整備計画は、西庁舎の賑わい施設、13億円の地下通路、空中通路、税部門の区役所からの集約化のために分庁舎を3階建てから4階建てに変更し11億円増額するなど、全体として縮減する対策が不十分であり、認められません。
最後に、教育に関する補正予算および賠償についての議案についてです。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、ご遺族の皆様、また、被害にあわれた方にお見舞い申し上げるものです。
まず、議第99号についてです。2年間にわたり過労死ラインを超える過酷な働き方を強いられてきた教員がお亡くなりになるという痛ましい事態が引き起こされました。お亡くなりになる直前2年間の超過勤務時間数は年間で1300時間および1800時間であり、月平均で150時間、過労死ラインをはるかに超える異常な働き方でした。本議案は、その賠償額を確定するものであり必要なものです。
学校教育の現場からいつになったら過労死がなくなるのでしょうか。教職員の長時間過密労働の問題は、現場からも改善を求める切実な声があがっていた問題であり、わが党も指摘をしてきたところです。ここまで長時間過密労働を放置してきた教育委員会と教育環境整備の責任を怠った市長の責任は重大だと言わざるを得ません。失った命を取り戻すことができないことは無念でなりません。このような事態を二度と引き起こさない体制をつくることが求められます。補正予算案では、欠員により教務主任等が授業を担当するなど負担が増している学校への緊急対策として50校分の校務支援員の追加配置が計上されています。もちろん現場の負担軽減になり、賛成ではありますが、これをもって欠員を補充できるものではありません。昨年度も44人の欠員が長期に及びました。このところ、欠員が常態化し、一人の先生が複数クラスを担任するというケースすらあります。過労死を生み出さない最低限の京都市の責任として、あらかじめ年度途中の欠員を見込んだ職員採用を行うよう、財政措置を講じることを求めます。
議第98号については必要なものであり賛成ですが、今回の事態を重く受け止めること、同時に、再発防止策まで落とし込むことも含め重篤事故については文部科学省のガイドラインにのっとって専門家による詳細調査を行い、再発防止に努めることを申し添えておきます。
ご清聴、ありがとうございました。
(更新日:2023年09月29日)