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京都市会本会議で世界遺産保護条例について提案説明2025年11月25日

本日行われた11月市会の開始本会議において、党議員団は、「京都市世界遺産保護条例」案を提案しました。代表して私が、条例議案の提案説明を行いました。その内容は、以下の通りです。
■とがし豊議員(左京区)提案説明 全文
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ただいま上程されました「市会議第27号・京都市世界遺産保護条例の制定について」、日本共産党京都市会議員団を代表し、その提案理由を説明します。
この条例は、千年以上にわたる日本文化の中心地として輝き続け、その顕著な普遍的価値が国際的に認められた世界遺産「古都京都の文化財」を、私たち現世代の責務として、確実に後世へと引き継ぐことを目指すものです。

まず、条例制定の背景についてご説明します。

世界遺産保護の枠組みは常に発展を続けています。2012年に京都市で開催された世界遺産条約採択40周年記念最終会合では「京都ビジョン」が採択されました。「コミュニティの関心と要望は、遺産の保存と管理に向けた努力の中心に据えられなくてはならない」と明記し、地域コミュニティの参画を中核とする新しい世界遺産保護のあり方を国際社会に明確に示しました。
こうした中、日本国内においても、世界遺産を抱える各自治体が独自の条例を制定し、その実効性を高める努力を積み重ねています。現在、国内の26の世界遺産のうち、半数の13の世界遺産において、各自治体が独自に世界遺産保護に関連した33もの条例を制定しています。これは、国の文化財保護法や景観法などといった既存の法制度だけでは、世界遺産の顕著な普遍的価値を守り、その地域固有の課題に対応するには不十分であるという認識に基づくものです。京都においても、先行する自治体の経験に学び、この国際的な潮流に応える形で、世界遺産保護行政をさらに一歩前に進める必要があります。

次に、なぜ今、世界遺産保護条例が必要なのか、以下、ご説明します。

第一に、本条例の制定は、単に世界遺産「古都京都の文化財」を保護するにとどまらない、より大きな、人類普遍の理想に資する意義があります。

世界遺産条約制定の背景となったユネスコ憲章は「戦争は人の心の中に生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と宣言し、国際平和と人類の共通の福祉という理想を掲げました。その具体化として、世界の遺産を保護するための国際条約を結ぶように諸国民に呼びかけ、世界遺産条約に結実しました。世界の人々が協力して、世界遺産を守り、受け継いでいくことは、自身と他者の歴史と文化に敬意を払い、多様性を受け入れることにほかならず、平和の礎を強固にする営みでもあるのです。数々の世界遺産とそこに暮らす人々を巻き込んだ戦争や破壊が繰り返される中だからこそ、条例制定を通じて今一度この崇高な目的を日本中、世界中の人々と共有したいと考えます。

第二に、現在の法制度や京都市の行政の仕組みだけでは、世界遺産の顕著な普遍的な価値を守ることができず、住民参加の新たな仕組みづくりが必要だからです。

京都市は、1994年の世界遺産登録以降、構成資産そのものの保護に加え、それらを包み込む緩衝地帯、さらには歴史的環境調整区域という線引きによって、歴史都市全体としての面的な利用・開発規制を講じてきました。しかしながら、構成資産の保護、緩衝地帯や周辺環境の保全については世界遺産の顕著な普遍的価値を守る上で十分とは言い難い状況が続いています。例えば、銀閣寺緩衝地帯における半鐘山や哲学の道の住宅開発、仁和寺緩衝地帯における仁和寺門前のガソリンスタンド・コンビニエンスストアの建設計画などが挙げられます。これらの開発計画は、現行法上は「合法」であっても、世界遺産という人類共通の財産、そして地域固有の景観に負の影響を及ぼすものでした。特筆すべきは、これらの紛争において、最終的に計画の見直しや断念を促したのは、地域コミュニティによる粘り強い運動と事業者を説得する努力であったという点です。京都市が加わって作成された世界遺産「古都京都の文化財」包括的保存管理計画においても、これらの事例は、「住民の尽力と行政の努力の双方があって、OUV(顕著な普遍的価値)への負の影響は軽微なものにとどまる結果となっている」と評価されています。これは、現行の世界遺産保護行政だけでは不十分であり、市民がより深く、制度的に参画できる仕組みこそが、今後も世界遺産への負の影響を最小限に抑える力になることを明確に示しています。

第三に、現在進行している大規模な都市計画の見直しが、世界遺産に及ぼす影響が極めて大きいからです。

都市計画のあり方について、多様な意見があることは当然でありますが、世界遺産条約履行のための作業指針の水準から見たとき、世界遺産保護の観点からの検討が十分になされているか、非常に大きな疑問を抱かざるを得ません。例えば、2007年の新景観政策で、高さが最大45mから31mに規制強化されたエリアについて、これを60mまで引き上げるという動きが一部で出ています。京都駅周辺に位置するこのエリアは、世界遺産の構成資産である東寺や西本願寺などが近傍にあり、歴史的環境調整区域にあたります。すでに多くの区域で面的な規制緩和や特例的な規制緩和が繰り返されてきた中で、無限定な規制緩和による都市開発を許してしまえば、京都のまちの個性が失われ、歴史都市全体としての保全という目標が失われる恐れがあります。世界遺産条約履行のための作業指針は、「資産範囲を超えて緩衝地帯」、さらにはより広い範囲である「周辺環境」についても視野に入れ、「地域コミュニティや先住民族を含むすべての関係者が、資産およびその普遍的、国家的、地域的価値、さらには社会生態学的文脈についての理解を十二分に共有していること」、「包括的かつ参加型の計画プロセス及び利害関係者協議のプロセスを用いること」などを求めています。この指針が掲げる、地域コミュニティが参画する「効果的な管理体制」を早急に構築してこそ、世界遺産保護の観点も含んだ開発と保全のバランスが保たれるのではないでしょうか。
以上の通り、これまで蓄積された知見と、先行する自治体の経験に学び、その顕著な普遍的価値を将来にわたって継承するため、本条例の制定が必要と考えます。

次に、条例の概要について、4つの柱にわけて説明します。

まず、第一の柱は、目的と基本理念についてです。

千年以上にわたる日本文化の中心地として顕著な普遍的価値を有する「古都京都の文化財」を後世に引き継ぐことを目的としています。基本理念において、構成資産所有者である宗教法人や国、関係地方公共団体、関係団体などとの緊密な連携のもと、古都京都の文化財の保全に関する施策を行うことを掲げています。

第二の柱は、各主体の責務と役割、保護すべき世界遺産の範囲についてです。

京都市の責務として、施策の総合的な策定と実施、推進体制の整備、そして財政措置をとることを明記し、条例の実効性を高めます。市民・来訪者・事業者等の役割として顕著な普遍的価値への理解を深め、市の施策に協力するよう努力いただくことを明確にし、京都にかかわるすべての人々の協力を促進します。構成資産およびその緩衝地帯にとどまらず、それらを広範囲に包み込む歴史的環境調整区域を明記しています。

第三の柱は、京都市が取り組む具体的な施策についてです。

古都京都の文化財の保全に関する各施策の基本となる事項を定めることで、現在行われている取り組みを条例によって裏付け、充実をはかります。施策の実施にあたっての配慮、良好な景観の形成等、構成資産の適切な保存等、来訪者の集中による影響の防止、古都京都の文化財の保全に関する学習機会の提供ややさしい言葉での発信、市民等の自発的な活動を支援するための措置、巡視の実施及び調査研究を内容とする各条項からなります。

第四の柱は、議会の関与、審議会、市民参加の仕組みです。

条例の実効性を確保し、行政のチェック機能を強化するため、特に重要な以下の仕組みを制度化します。市長は、世界遺産の保全状況について市会および新たに設置する審議会に定期的に報告し、その検証を受けることで世界遺産の現状と課題を広く市民が共有できるようにします。世界遺産「古都京都の文化財」の顕著な普遍的価値に重大な影響を及ぼすような課題が生じたとき、市民が申立てを行い、世界遺産保護の観点から検証を行う仕組みを設けます。これは、行政の対応が不十分な場合に、市民の声を反映させ、世界遺産保護行政の充実を図る重要な仕組みとなります。

最後に施行期日について、ご説明します。

世界遺産保護審議会などの仕組みを整えるためには、少なくとも1年程度の準備期間が必要であることから、第15条から第18条までの規定については、令和9年1月1日からの施行とし、それ以外の条項については公布日からの施行といたします。

結びに、

古都京都の文化財は、世界の人々にとってかけがえのない宝であり、私たちはその保護と継承について、国際社会に対して責任を負っています。本条例は、市民、専門家、行政の知恵と力を結集し、京都の歴史と個性を守り抜くための新たな一歩です。世界遺産条約履行のための作業指針が掲げる「効果的な管理体制」を早急に構築し、「古都京都の文化財」の顕著な普遍的価値を揺るぎないものとするため、本条例の制定について、ご審査いただき、先輩・同僚議員のご賛同をいただけますよう、心よりお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
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#世界遺産保護条例
#日本共産党
#とがし豊

(更新日:2025年11月25日)

G7エネルギー・環境大臣会合へ~環境市民団体から発せられた警鐘~

日本の環境市民団体などでつくるCAN-japanが重要な声明を発表されていたので、そのまま転載してご紹介したいと思います。

端的で、かつ、気候危機打開に向け、私たちが一致結束すべき道をしめしてくれています。

私も私にできることを最大限頑張りたいと思います。

ーーーー以下引用ーーーー


G7エネルギー・環境大臣会合を受けて
ーーCOP30に向け、リーダーシップの回復が求められるーー

2025年11月4日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

カナダのトロントで開催されていたG7エネルギー・環境大臣会合は議長声明を発表し、11月1日に閉幕した。

この会合に先立つ10月15日には、世界気象機関(WHO)が、大気中の二酸化炭素濃度が産業革命前より52%も高い423.9ppmに上昇したことを筆頭に、主要な温室効果ガスが観測史上最高を記録したと発表した。
国連のグテーレス事務総長はこの結果を受けて、「世界の平均気温が1.5度を上回ることは避けられないが、今世紀末までに1.5度目標を達成することはなお可能だ」と述べ、1.5度目標に整合した削減目標の提出を各国に求めた。
さらに10月28日には、国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)が9月末時点で64か国から提出された2035年削減目標を集約した「NDC統合報告書」で、1.5度目標の達成にはさらなる努力が必要であることを明らかにした。

トロントに集まったG7の環境大臣には、1.5度目標の実現が危ぶまれるなかで、自ら野心的な気候変動政策を掲げ、世界に向けて目標達成への決意を示し、1週間後に迫ったCOP30の成功を呼びかけることが求めれられていた。

過去数年のG7環境大臣会合では、1.5度目標達成への意思を再確認し、世界の脱炭素化を先導する役割を果たすため、化石燃料からの脱却や、電力部門の2035年までの脱炭素化など野心的な成果文書をまとめてきた。

しかし、今年は、6月の首脳会合に続いて環境大臣会合でも、気候変動に言及することさえせず、これまでG7が積み上げてきたコミットメントを大きく後退させた。
「化石燃料からの脱却」がCOP28で採択され、昨年のプーリアサミットで再確認されたにもかかわらず、今回の会合の成果となる議長声明は、天然ガスの安全保障を謳い、原子力や実用化されていない核融合エネルギーの推進を掲げたことは、気候リーダーシップの放棄にほかならない。
「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」を掲げる高市政権が、気候外交において議論を主導することもなかった。

希望はある。世界には率先して脱炭素化を推進する国々があり、自治体や企業、市民社会などの非国家アクターは国境を超えて連携し、行動を加速させ、COP30では「行動アジェンダ」の実施に向けた議論を行うことになっている。G7への失望は、こうした国々や非国家アクターを奮起させ、取り組みを強化させることだろう。

10月29日には、WHO(世界保健機関)は熱中症による死者は90年代から60%増加し、世界全体で年間55万人にのぼるなど、労働損失や経済損失を招いていると報告した。気候危機がいっそう深刻化するなかで、取り組みの停滞は許されない。G7は気候変動を引き起こした歴史的責任を認識し、自ら放棄したリーダーシップを回復することが求められている。

(更新日:2025年11月05日)