子ども医療費・給食費「2つの無償化」条例について賛成討論
日本共産党 京都市会議員 とがし議員 2024.12.11
日本共産党京都市会議員団は、無所属の井崎敦子議員とともに共同提案しております市会議第16号京都市子ども医療費支給条例の一部を改正する条例、市会議第17号京都市立学校の学校給食費の助成に関する条例の制定について、賛成を表明しておりますので、日本共産党を代表してその理由を述べます。
【子育て支援の遅れをとりもどす】
第1に、子どもの医療費助成を18歳まで拡大し、小中学校の給食費を無償化する2つの条例案を実現することにより、京都市の子育て支援策の遅れを一挙に取り戻すことができるからです。
本市の場合、全国よりも大きな落ち込みとなっている合計特殊出生率の深刻な低下に加えて、子育て世代の人口流出が深刻な課題となっております。経済的理由によって子どもを産み育てにくい社会の現状の改善が強く求められているのではないでしょうか。現に、国立社会保障・人口問題研究所が示した将来推計人口によると、京都市の子ども世代が2030年には1割以上減少するとの予測が示されています。しかも、この推計が発表されたのち、合計特殊出生率の低下が指摘されているわけで、まさに今、何の手立ても打たなくてよいのか、問われています。
子どもの医療費助成を18歳まで拡大している政令指定都市は、来年から入院・通院で実施する札幌市を含むと20都市中15都市となります。京都府の中では、26市町村のうち18自治体が18歳まで助成しています。通院での現物給付・一部負担金月200円が小学生まででとどまっているのは京都市のみとなっており、この格差の解消は待ったなしです。給食費の無償化をめぐっては、すでに全国の3割の教育委員会において無償化をすすめており(完全無償化3割、要件あり含め4割)、本市でもぜひ実現してほしいという切実な声が世代を超えてよせられています。
本条例を制定することによって、現在京都市に住む若い世代が子育てにかかわる医療費や給食費の負担を心配しなくていいまちに、この京都市をアップデートできます。そんな希望が開けるならば、すばらしいではありませんか。今政治に必要なものは希望であります。
【子育て・教育無償化の全国の流れを加速する】
第2に、本市がこの条例実現で一歩踏み出し、子どもの医療費助成を18歳まで拡大することや、給食費の無償化を進めることができれば、子育て支援策の遅れを取り戻すにとどまらず、全国的な子育て・教育無償化の流れを加速させることができます。
12月9日、石破総理大臣は、学校給食の無償化の実施を問われ「実施校でも喫食しない児童生徒には恩恵が及ばないといった公平性」「国と地方の役割分担や政策効果、法制面など考えられる課題を整理していく」と、全国的な給食費無償化の検討状況を国会答弁されました。私たちが提案している給食費無償化は、選択制の中学校給食を注文していない子ども、アレルギー対応で弁当を持参している子ども、不登校の状況にある子どもたちの世帯に対して、給食費相当額を給付するとしています。今まで光の当たってこなかったこうした皆さんに支援の手が届くことになります。この進んだ内容での給食費無償化方式が、全国の制度として採用されれば、どれだけ多くの子どもたちに光が届くことになるでしょうか。しかも、統一地方選挙の際には、給食費無償化をすべての主要政党が公約しており、地方の動きが拡大することは、これらの国会情勢にも大きく反映するものです。今まさに、無償化の決断をすべき時ではないでしょうか。そして、これらの無償化が国の制度として実現するならば、教育や福祉の増進の財源として活用する道が開けるのではないでしょうか。
【財源はある!】
第3に、本市財政が、この2つの無償化を実行しうる財政状況にあるからです。
審議にあたって他会派から「予算確保の見込みが立たない状況で提案したのではないか」とのご指摘がありましたが、原局である教育委員会並びに子ども若者はぐくみ局との事前協議において必要となる財源を確認したところ、両事業で約50億円とのことでした。本市財政は、前市長による「財政破綻しかねない」という財政見通しが大幅に外れて、財源不足どころか、通常の借金返済に加えて、計画外の積立てによって公債償還基金は2002億円まで積み上げました。かつ、2022年は77億円、2023年は88億円の大幅黒字決算が続いています。予算確保の見込みが十分立つことが明らかとなりました。予算提案権は市長にあり、本条例が制定されれば、具体的には市長におかれて検討いただくこととなります。市当局も、行財政運営の「フェーズが変わった」として、市長自身が「過少投資」を見直すと表明されています。この財政状況を念頭におくと、徹底した予算の精査をおこなえば、今般示した子育て支援策の拡充は十分可能であると考えます。
その上で、私どもは、さらに4つの面から歳出入改革により財源ねん出できる可能性をお示した資料を提出させていただきました。
1つ目のさらなる財源ねん出の可能性は、不用不急の事業を見直すことです。京都駅新橋上駅舎・自由通路整備事業、鴨川東岸線第三工区、スマート区役所推進に資する取り組み、万博推進・機運醸成、スタートアップ創出プロジェクト、企業立地促進プロジェクトのうち大企業向け部分など、見直すだけで合計6億2400万円のねん出が可能です。
2つ目は、新たな歳入の確保の取組です。一案として、法人市民税のうち大企業への超過課税を示しました。財政当局によると、法人税割で5.9億円、均等割で4億円、計9.9億円の財源が見込めるとのことです。例えば、大企業の法人税割に関しては、京都府の中で京都市以外の市町村ですでに京都市よりも0.2%高い法定上限までの税率を実施しており、14政令指定都市でもすでに実施されています。
3つ目は、今後の行財政運営の見直しによる財源ねん出の可能性です。市長は、新京都戦略において、毎年35億円を「過去負債の返済」にあてつつ、これまでよりも毎年50億円多めに市債発行を認める財政運営を進めるとしています。将来世代への責任の果たし方は様々ありますが、私たちは現状の市債発行上限を堅持し、市債発行に伴う一般財源の支出の削減、利子の負担や公債償還基金への新たな積立てによる負担を軽減することで、将来世代への責任を果すべきと考えています。その上で、通常の公債償還基金への計画的積立は堅持しつつ「過去負債の返済」額を毎年5億円へと圧縮し、毎年30億円を財源として活用することを一案として示させていただきました。
市債発行を400億円以下に抑制しようと思えば、確かに、北陸新幹線の京都地下延伸や堀川地下バイパス、国道1号線・9号線バイパスという新たな大型道路建設はやめなければならなくなるでしょう。平成初期の大規模投資のみならず、その後も繰り返されてきたような無駄遣いや過剰な投資も改める必要があります。国が交付税措置で後々補填してくれる部分もありますが、全てではなく、結果、今の苦しい公債費負担が財政難を招いていることを忘れてはなりません。
4つ目は、対象人口減少に伴う経費の圧縮です。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計から、京都市の子どもの人口が5年で1割減少すると推計されています。子育て支援策の強化などの効果が出てくるのは、一定の年月を要することから、対象となる子ども世代の減少はしばらく避けられません。推計通りとなった場合ではありますが、結果として、令和7年度から令和12年度までに計15億円程度圧縮されますが、財政調整基金を活用しこの15億円を6年で平準化すると当初よりも2.5億円程度の経費を圧縮することが可能です。子どもが減れば財政負担が軽くなり、子どもが増えれば負担が増えることは子育て支援策のジレンマではありますが、統計データの範囲での試算を示しました。
最後に、今回の私どもの提案に対して、日本共産党は、子どもの医療費や給食費の無償化のほかに、民間保育園の補助金の拡充や、敬老乗車証をもとに戻すことなどを提案しており、そんなにたくさん実現できるのかという率直なご意見もいただきました。私どもはもちろんより抜本的な歳出入改革を行う中でこれら施策を総合的に実現したいと考えております。今回の提案は、より多くの皆さんと一致できる、市会としての一致点を探求し、喫緊の課題である子育て費用の2つの無償化に限定することにしました。市民の願いにこたえる議会としての役割を果たそうとするものと考えております。若い世代が夢と希望をもって生きていける京都へ、同僚議員の皆さんが決断いただくことを心からお願いして、賛成討論とします。
(更新日:2024年12月12日)