京都市の保育現場から、かつてないほど切実な叫びが届いています。2021年の行財政改革により、民間保育園への人件費補助金が13億円も削減されました。その結果、ベテラン保育士が「大好きだった仕事を辞めるしかないのか」と悩み、現場では人手不足から子どもたちに「待ってね」と連発せざるを得ない厳しい状況が続いています。
市は「財政難を脱した」と言いますが、他事業の予算が戻る一方で、なぜ保育予算だけが削られ続けるのでしょうか。国の処遇改善に頼るだけでなく、市独自で積み上げてきた「京都の保育」の質を今こそ取り戻すべきです。専門職が誇りを持って働き続けられる環境をどう守るのか。3月5日の予算特別委員会での質疑を報告します。
2026年3月5日 京都市会予算特別委員会 第二分科会
子ども若者はぐくみ局 局別質疑
保育の現場で働く皆さんの処遇改善について
〇とがし豊委員 え、私からは、で民間保育園の運営に関わってと、こども誰でも通園制度についてお聞きをしたいと思っております。
まず、民間保育園で働く皆さんの賃上げと保育条件の改善について質問いたします。京都市としては2021年の行財政改革計画で、民間保育園の人件費補助を大幅に削減するということが行われ、予算ベースでも13億円削減されました。現場からは批判や指摘などもあり、その都度手直しを続けてきたという経過を辿ってまいりました。
国の処遇改善の取り組みもこの間進められてきましたけれども、現下の保育士不足にあって、京都市として現状の取り組みで十分という風に認識されているのか、さらなる改善が必要という認識なのか。この点についてまずお答えください。
〇幼保総合支援室長 保育士の処遇についてでございます。これまでから申し上げておりますけども、制度を再構築し、新制度として人件費補助金が再構築されて以降も、我々としましては様々な拡充に取り組んできたところでございます。また、各現場の要望や声も聞きながら的確に、今ある課題に対して対応してきたところでございますので、引き続き必要な支援についての検討は進めてまいりたいという風に考えております。
〇とがし豊委員 昨年の決算審査でも、京都市保育会のアンケートを紹介させていただきました。「このままでは離職を食い止められない」という切実な思いで表されたアンケート結果でございました。
このアンケート結果を拝見しておりますと、離職を防ぐために最も有効だと思う改善策として、現場の保育士さんたちが挙げた対策は何だったのか。複数回答だったのですが、1番は「給与の引き上げ」が90.4%。2番は「保育士配置基準の見直し」78.9%。3番は「有給休暇制度の整備」69.7%。4位、5位同数で「国の設定する保育標準時間の見直し」「業務の分業化」44.7%。6位が「保護者対応の制度的サポート」26.3%。7位が「メンタルケア相談体制の整備」25.7%ということでした。
9年目の保育士さんのコメントも添えられておりました。「今まで大好きな子どもたちと関われる夢みたいな仕事に誇りを持って、辞めたいなんて思わずやってきた。しかし現在の社会状況下で、今の給与を見るたびにお金を選んでいるわけではないが、違う仕事を探すことも必要かと思うようになった」というお声です。
保育の仕事が好きでたまらない方にこのような思いをさせている現実がありますが、私はこれは京都も含め全国の保育士さんの率直な思い、実情ではないかと思います。これらのたくさんの声を集約されまして、市保育会としては、1番に「給与の引き上げと処遇の底上げ」、2番に「人員配置の改善、常時余剰人員の確保」、3番に「週休2日・休息休暇取得の保証」、4番に「事務作業や書類業務の簡素化・時間の確保」という4点を提案されています。現場からの声を正面から受け止めた、思い切った改善が必要だと考えますが、いかがでしょうか?
〇幼保総合支援室長 京都の保育士の労働条件、給与条件に関するお尋ねと思います。 まず前提としまして、各園の保育士の労働条件につきましては、個々の園において経営的な観点も含めて考えられるべきであって、本市が給与等全てを保証するものではないという前提がございます。その上で、保育士等が働き続けることに対して不安を感じていたり、離職を考えたりされている現状、こういったものに対してはやはり定着という意味では課題であるという風に考えております。
ご指摘の保育士等の処遇改善につきましては、やはりまず一義的には国の責任において対応するべきものと考えておるところでございますけども、保育士が働き続けられる環境を整えることが重要であることは、本市の認識も同様でございます。そのため、これまでから国の給付に加えて独自の補助を行ってきているところということでございます。
繰り返しになりますけども、令和4年度に人件費補助金として制度再構築した後も、全体として処遇の維持向上を図ることができる仕組みとしておりまして、さらに関係団体から頂いたご意見等も踏まえ、人件費補助金におきましては人件費算入の向上割合の拡充、経験年数加算の上限年数の引き上げ、3歳児配置の新設など、必要な対応を積み重ねてきたものでございます。
また令和7年度につきましては障害児補助金の充実、令和8年度には先ほどご紹介いただきました1歳児配置の充実など、こうした予算も計上しておるところでございます。必要な対応は実施してきていると認識しており、この間の充実額というのは総額で21億円を上回る規模となっている認識でございます。
〇とがし豊委員 21億円を上回る充実を図ったとおっしゃるのですが、実際には今、余剰人員がいないということで、現場の保育士さんの声として「子どもたちに『待ってね』という言葉を連発せざるを得ない」と。散歩やプールをやりたいと思っても人手不足で、今日予定していたけれど人が足りなくてできないということもあり、なおかつ有休消化ができなかったり、休み中の人を呼び戻さなければいけないこともあるというのが今の現場です。
京都市は少しずつされていますが、元々あった補助金を大幅にカットしたところから、もう1回積み戻しているという世界に留まっています。給与面のさらなる引き上げ、人件費算定の上限の底上げ、これをしっかりやっていくこと。常時余剰の人員がいる余裕を持った保育現場にしてほしいという声にしっかり応えることが、保育士の皆さんがやりがいを感じ、休みもしっかり取れて、子どもたちの命と育ちを支える専門職にふさわしい職場になるんじゃないかと思います。もっと踏み込んだ思い切った支援がいるのではないでしょうか。
〇幼保総合支援室長 踏み込んだ支援ということのお尋ねでございますが、国を挙げて人材不足というのは、保育業界だけではなく福祉業界全般、日本国内全般であるかと思います。その中でも保育に関して言いますと、公定価格の引き上げが令和6年度は10.7%、令和7年度につきましては5.3%の充実ということで、人件費の底上げが図られているところでございます。
やはり一義的には国においてそういった取り組みを要望していくことが大事だと思っておりますし、我々としましてもそうした国の給付費の充実に加えて、先ほど申し上げました人件費補助金などによる充実には取り組んでおるところでございます。引き続き、現場の負担を軽減することを含めた人材確保には取り組んでまいりたいと考えております。
〇とがし豊委員 保育所運営費の予算決算の詳細な内訳及び負担割合について、資料を作っていただきました。これを拝見いたしますと、支出ベースでは市独自事業が令和6年度決算で52.8億円だったものが、令和7年度は47.3億円、令和8年度は41億円となっております。この2年で9億円の削減となっております。
財源ベースで見ましても、令和6年度52.3億円だったものが、令和7年度45.7億円、令和8年度は40.1億円と減ってきている。この2年間で12.2億円の減となっているわけです。国の給付費が増えても、こうした形で京都市が支出する保育の充実に回す予算が削られているという実情があります。
さらに令和8年度には国において、調理体制の充実のための単価見直しや、療育支援加算の見直しなど、公定価格や基準の見直しがさらに検討されているということであります。こういう状況を見ますと、京都市としては財政的余力がこの分野では生まれている。令和8年度に予定されている改善も含めて、処遇改善のための踏み込んだ改善に取り組む余地が十分あると考えますが、いかがでしょうか?
〇幼保総合支援室長 国の給付費の充実に伴って、市の財源が生まれているのではないかというご指摘でございます。おっしゃるように国の給付費が上がりますと、園の収入が増えるわけですから、人件費補助金については通常はマイナスの方向に働くというのが基本的な考え方であろうかと思います。
ただ一方で、国の給付費につきましても増額する中で市の負担(1/4)は当然ございますし、また先ほど申し上げました通り、この間、単独予算でさらなる充実を重ねてきたという経過もございまして。総額ベースで言いましたら児童数が減少しているわけですから、下がる傾向があるんだろうと思っておりますが、児童1人当たりに対しての給付費、あるいは市の単独の補助を考えますと、決して子育て環境を後退させているものではないという風に認識しております。
〇とがし豊委員 後退しているわけではないと言われるのですが、行財政改革の議論の中でも後退している事例はいっぱいありましたし、賃下げになった方もたくさんいらっしゃるということはご承知のことだと思います。賃下げになるようなことを生み出して、国全体で処遇改善が必要だと言っている時に賃下げをするようなことを誘導してしまったわけですね。やはり上限の設定の仕方が間違っていたんですよ、人件費補助金の。
せっかく長年の保育の現場の皆さんが京都市と一緒に積み上げてきた良い部分を、かなり削ってしまったのではないかと思います。保育園の第2子以降の無償化措置なども含めて、京都市の一般財源の支出で見ますと、保育関係で行財政改革との比較で見ても66.4億円削られてしまっているんですよ。
「財政破綻するかもしれない」と言っていたところから「フェーズが変わった」と言って、他の事業はどんどん変わっているのに、なぜ保育の現場だけフェーズが変わったにならないのか、極めて疑問に思うわけです。国も改善をやるということはありますが、それに頼らずに、もっと保育士さんに本当に聞いてもらって、どうやったら定年まで頑張って働き続けられる職場になるかということを考えていただきたい。
京都市の補助金は行財政改革で14.4億円削られ、今回さらに12.2億円削られている。十分余力があるから、そのお金をしっかり使って現場の処遇改善をいただきたいと思います。
それで、保育士人材確保の取り組み事業ごとの予算内訳をいただきまして、12事業計2億3000万円が示されておりましたが、保育士さんを直接支援するという点では「保育士宿舎借り上げ支援事業」のみであります。これも国の支援メニューの範囲の中で、京都市独自の上乗せはないということであります。これも京都市としてより充実したものにしていただきたいし、直接現場の皆さんを支援するメニューを拡大していただきたいと思いますが、いかがでしょうか?
〇幼保総合支援室長 市の人材確保に対する支援メニューについてのお尋ねでございます。 まず令和6年度の給与の実態調査などを行っておりますところ、平均人件費については各園の平均値は基本的に上がっておりまして、決して処遇悪化をしているということはないということを補足させていただきます。
人材確保に対する支援に関しましては、京都市が行っている政策、国庫補助金を使っているものもありますし、また京都府が行っている政策をご案内しているものもございます。また京都市においては、繰り返し申し上げておりますが、人件費補助金という多額の単独予算を投下してもございます。こうしたものがトータルで、京都市の強みあるいは定着支援につながるものと思っております。現時点で我々は、全国に対して京都市の保育の環境が劣るとか強みがないと思っているわけではございませんので、しっかりそういった前向きな発信をしていくことで、人材の確保には取り組んでまいりたいと思っております。
〇とがし豊委員 皆さんはそうおっしゃるのですが、実際には行革の影響で賃金が下がった方がたくさんいらっしゃったわけです。そこから持ち直したとおっしゃるのかもしれませんが、やはり京都市が積み上げてきたところから考えると、もっと処遇改善に力を入れなければいけないと思います。
「全国よりも優れている」とおっしゃる、もちろん頑張っている部分もあります。それは保育関係者の皆さんが京都市と一緒に積み上げてきたからです。その努力は評価していますが、その積み上げたものが崩されているから今意見を申し上げています。むしろ今こそ京都市が引っ張っていくぐらいの気持ちで、国の給付費が増えた分、市の持ち出しを減らすのではなく、それをさらなる処遇改善に回すことで、保育士が専門職としてこの日本社会で尊重される道を開いていただきたい。このことを求めておきます。
子ども誰でも通園制度について
〇とがし豊委員 次に、こども誰でも通園制度についてお聞きいたします。2年の試行実施を踏まえて、新年度からいよいよ本格実施となりますが、各保育施設においてどのような職員体制でやられるかお聞きしたい。時間の関係があるので簡単に質問から入ります。
基本的には保育従事者2人以上となっていて、その半分以上は保育士資格を有する方、それ以外の方も研修を受けた方になるということですが、配置基準の関係で見ますと、0歳が3対1、1歳児が6対1、2歳児6対1になっています。京都市の独自の配置基準で言うと、0歳は3対1、1歳児は4対1(加算分)、2歳は6対1となります。
「余裕活用型」や「在園児との合同型」で保育の現場と一体にやっていくことや、本体からの応援が含まれていることを考えると、少なくとも(独自の配置基準と)同じ基準にしなければいけないと思います。また、今回月10時間から12時間に2時間上乗せして使いやすいようにされますが、週1回3時間預けるにしても、子どもたちが馴染んでいくことを考えた時に保育士さんの負担は重たい。通常以上の体制がいるんじゃないか。少なくとも京都市の独自配置基準ぐらいまでのところでやる必要があるのではないかと思いますが、今回の補助の方の配置の考え方、なぜこうなったのかということ、それから月12時間で果たして子どもたちが本当に馴染むことができるのか。市としてはより一層、一時保育の充実が求められているのではないかと思いますが、合わせてお答えください。
〇幼保総合支援室長 まず配置基準についてでございますが、こども誰でも通園制度の配置基準は、0歳が3対1、1・2歳児が6対1が基本的な考え方でございます。これは国基準に準じているということと、一時預かりの制度に準じているということでございます。
ただ、ご指摘の通り、京都市の保育所につきましては独自の条例に基づき、1歳児については5対1まで上乗せしております。従いまして、例えば「余裕活用型」という在園児と合同で行う類型につきましては、保育所においては5対1の基準を求めているということでございまして、そこを軽減しているものではございません。
それから一時預かりとの制度の充実についてですが、一時預かりは基本的には保護者の就労形態や要件に基づいて使う制度という立て付けになっております。こども誰でも通園制度は、保護者の就労要件を問わず全てのこどもの育ちを応援する制度となっております。制度の目的が異なるという点と、長く預かることがこどもの成長を促すということではなく、それぞれの目的に沿ってニーズに沿って、提供体制を整えて充実を図っていくことが必要なのではないかと考えております。
(更新日:2026年03月06日)


