2025年3月25日、京都市会閉会本会議で、日本共産党京都市会議員団を代表して、2025年度京都市一般会計予算案などへの反対討論を行いました。
その討論の要旨をご紹介します。
日本共産党京都市会議員団は、議第1号2025年度京都市一般会計予算、議第3号国民健康保険事業特別会計予算、議第4号介護保険事業特別会計予算、議第17号事務分掌条例一部改正、議第18号職員定数条例一部改正、議第23号ユースホステル条例の一部改正(負担増)に反対の態度を表明しておりますので、その理由を述べ、討論します。
評価できる部分
2025年度予算については、第二子以降の保育料無償化、在宅酸素人口呼吸器の非常用電源購入への支援、美術館学芸部門の直営化、教員確保や校内サポートルームの人員体制の充実、就学援助制度の加算対象年齢の拡大・卒業アルバムへの拡充、学校体育館へのエアコンの設置推進、「まちの匠」の継続、防災減災事業、生理用品の学校トイレへの配備の拡大、文化財保護予算の増額、DV相談支援センターみんとの体制強化など、市民要求にこたえる内容が多々含まれている点については、市民の世論と運動が実ったものとして歓迎するものです。
しかしながら、市長提案の予算案などについて、以下、5つの理由から反対を致します。
① 反対する第一の理由は、市長自身が「新京都戦略」において「市民生活第一」を掲げたにもかかわらず、市民生活の土台を崩すような負担増を行うとしているからです。
高齢者や低所得者などが多く加入する国民健康保険の保険料を来年度10.35%引き上げ、5年連続での過酷な引き上げ方針を示したことは重大であり、撤回を求めます。京都市はこれまで、国民健康保険が、保険証1枚でだれもが安心して医療にかかれる国民皆保険制度をささえる土台だからこそ、一般会計からの財政支援を行い、保険料の引き上げをおさえてきました。ところが市長は「最後のセーフティネット」「社会保障」としての国民健康保険の役割を「相互扶助」に矮小化し、大幅な引き上げを正当化しました。きわめて重大な国保行政の変質であります。改めて、社会保障制度として市民の命を守る国民健康保険への支援を求めるものです。
介護保険事業をめぐっては、訪問介護報酬の引き下げによる影響で事業所運営が厳しくなっており、より踏み込んだん支援が必要です。
子育て・若者支援をめぐって、13億円の予算を投じた第二子以降の保育料の無償化は重要な前進です。しかしながら、民間保育園の人件費にかかわる国からの給付費が増えたにも変わらず、京都市の民間保育園人件費補助金の財源が10億円削減されたため、民間保育園で働く皆さんの処遇は今年度と同水準に据え置かれました。副市長答弁で「人件費を確保することが担い手確保につながるという認識」を示されたのですから、国による公定価格引き上げの機会をとらえて処遇改善につながる財政措置をとることが当然の筋であることを指摘しておきます。
若者たちに低廉な料金での宿泊を提供し、宿泊者や市民の間の交流を行うことを理念に掲げる「宇多野ユースホステル」での利用料の値上げ、子ども未来館駐車場料金の値上げも、市民の納得は得られません。
② 反対する第二の理由は、市長が市民向けには「すべての市民に居場所と出番をつくる世界都市」といいながら、実際にはその居場所と出番をさらに奪いかねない内容があるからです。
敬老乗車証の制度改悪から4年目となりますが、交付者数はコロナ前と比べ6万680 人も減少し、交付率は約50%から31 % と大幅に低下しました。4年前の制度大改悪が高齢者の外出機会を奪っています。敬老乗車証制度は、毎日の通勤・通学の負担を軽くする定期券とは根本的に違い、交付を受けた方に「敬老乗車証さえあれば、お金の心配なくバスに乗れるので、ぜひ、お出かけください」「健康に長生きしてください」という「敬老」と「福祉の心」を体現した制度です。その結果、高齢者が気軽に外出できて「居場所と出番」を得て元気になる健康効果、介護予防、買い物などによる経済効果、ボランティア参加によるコミュニティ活性化効果、市バス・地下鉄・民間バス事業者への補助金としてその経営安定化に貢献します。まさに、市民の宝です。2021年当時の制度に戻すべきです。制度の趣旨を損なう応益負担導入は断念すべきです。
「左京東部いきいき市民活動センター」の廃止は、市民から「居場所と出番」を奪うものであり、認められません。団地再生計画において、存続・再整備を検討することを求めておきます。
③反対する第3の理由は、首都圏・海外大企業、開発資本には、規制緩和と減税や財政支援の大盤振る舞いを行いながら、中小小規模事業者支援が極めて不十分であるからです。
2023年4月の大規模な高さ・容積率などの緩和、昨年の都市再生緊急整備地域の指定の拡大に続き、都市再生緊急整備地域内で更なる高度利用を行うとする初めての都市再生特別地区指定が行われることを前提とした手数料が定められるなど、規制緩和を使った再開発の動きが加速しています。この都市再生特区は、従前の高さ・用途規制を適用除外にしてしまうもので、東京では丸の内はじめ18地区で導入されています。これを京都市でも初めて導入しようとされています。京都駅ビル開発と日本郵便による京都中央郵便局跡ホテル・商業施設では、31m規制を60mまで緩和。三条京阪でも高さ規制の緩和が狙われています。京都駅南側では貸しビル建設事業者に最大3億円の減税措置、農地を産業用地に転用したら土地売却価格に10%の補助を最大3000万円までに土地所有者に支払うなど実質的な開発補助金となっています。事業者は利益が上がるから進出するのであって、このような極端な規制緩和や補助金、減税などの措置は全く必要ありません。相次ぐ規制緩和が開発圧力となり、地価高騰を招き、家賃の高騰や住環境悪化、再開発による追い出しが懸念されます。都市計画マスタープランの見直しにあたっては、ミニ東京を目指すのではなく、中低層高密度のまちづくりによって活性化に成功しているヨーロッパの諸都市から謙虚に学ぶことが、必ず、京都の未来につながると指摘しておきます。
また、本来は中小・小規模事業者や市民の暮らし応援のためにこそ税金は使うべきです。岩手県などが進める中小企業などへの賃上げ支援や厳しい現状にある中小小規模事業者への直接的な新たな支援策を強く求めます。
市長が、「過少投資」は問題であるとして、400億円に抑えてきた市債発行額を毎年450億円規模へ膨らますという方針転換をされたことは重大です。「平成初期の大規模投資」「地下鉄東西線の工事費用の負担」が、現在の京都市の慢性的な財政難を作り出しているという苦い教訓を忘れてはなりません。京都駅新橋上駅舎・自由通路の建設は、税金ではなくJRが全額負担すべきです。鴨川東岸線第三工区は、総事業費70億円のうち1億4千万円が計上されましたが、中止を求めます。市長は、堀川通地下バイパストンネルの建設、国道1・9号線バイパスの建設を推し進めるとされていますが、2050年二酸化炭素排出正味ゼロ社会、人口減少社会を見据えれば、計画は断念すべきです。
公共投資の在り方も問われています。子どもたちに豊かな中学校給食・食育を実施するという政策目的から考えると、業者丸投げのPFIによる大規模給食工場を選択していることは問題です。条件のある学校から順次、施設改修を行い、小学校と同じような、出来立てでおいしい学校調理方式の全員制中学校給食を実施するように求めます。公園のオープンスペースを3割以上も民間企業に差し出すPark-Upフェーズ3の拡大はやめ、一人当たり10平方メートルの公園拡大目標の達成を目指し、十分な公園整備予算を確保すべきです。
北陸新幹線については、現行ルートに関する強い懸念を示されたものの、第二国土軸としての意義があるとして中止の立場は表明されませんでした。北陸新幹線の京都延伸計画そのものの中止と、特急サンダーバードで金沢方面に直接行けるように改善されるようJRや国に求めるべきです。万博に向けた機運醸成・誘客推進事業についても削減すべきです。
④ 反対する第4の理由は、職員削減を進め、自治体が担うべき基幹的な業務さえも民営化するなど、公的責任を後退させているからです。
市長は、「新しい公共」を実現する区役所の役割を重視するとおっしゃいます。しかし、もともと区役所にあった様々な機能・権限を本庁に集約化・民間委託化して人員削減を進めてきたことで区役所体制が弱体化してきた事への反省がなく、市民窓口課と保険年金課の統合によるさらなる削減も狙っていることは重大です。消防職員をはじめとした職員削減による職員の疲弊は著しく、退職者が増えていることは問題です。8割の京都府民が住む南部地域の消防体制を京都市に集約化し、消防体制を弱体化させる京都府南部消防指令センター整備は中止すべきです。
市営住宅のシャワー設置率が3割にとどまっていることは、あまりに不十分です。空き住戸6741戸のうち公募困難住戸3768戸が空き家のままになっていますが、民間事業者に丸投げせず、市民共有の財産として京都市の責任で適切に改修し、入居を進めるべきです。
唯一、運転監視業務を直営で行っていた東北部クリーンセンターについて、4月から民間委託化することは認められません。直営で、焼却炉の運転・設備更新に関する知識や経験を実地で蓄積し、安全な運転管理と危機対応への責任を京都市が直接果たせるよう求めておきます。
新京都戦略にはジェンダー平等の一言もありません。きわめて遅れています。本市の女性管理職比率が低下していることについて、市長は「管理職の仕事が家庭生活との両立が難しい状況があるのではないか。見直していかなければならない。重く受け止めている」と述べられました。早急な対応を求めます。
⑤ 反対する第五の理由は、温暖化による気候危機を打開する取り組みが不十分だからです。
気温上昇を産業革命前の1.5℃に抑えるためには、2050年二酸化炭素排出正味ゼロ社会の実現が不可欠ですが、気候危機の深刻化は、これまで以上に踏み込んだ中間目標設定とその実現のための大胆な社会システムの変革を迫っています。市長はこのままでは2030年までに温室効果ガスを46%削減するという目標達成自体が厳しいという認識を示されたにもかかわらず、取り組みが従来の延長線上から前進していないことは重大です。公共建築物の建て替えにあたり省エネ・再エネの徹底で再生可能エネルギー100%に、農業と両立するソーラーシェアリングの普及、クルマ交通の削減・公共交通への転換、建物の屋根への太陽光発電の一層の普及など、あらゆる手をつくし、2030年50%から60%削減、2035年65%~75%削減へ、目標そのものを引き上げるように改めて求めておきます。
京都市事務分掌条例の一部改正に反対の理由は・・・
○京都市事務分掌条例の一部改正では、環境政策局を「部局横断の組織」から、京都市行政の一部門へと位置づけを引き下げるものとなっています。京都市の気候危機への意識の後退を示すものです。今一度、地球温暖化による気候危機を打開するに足る体制の立て直しを求めるものです。今回の予算は、松井市長が一年を通して編成した初めての本格予算となりましたが、福祉切り捨て・大型開発温存という前市長の「行財政改革計画」をそのまま引き継ぎ、暮らし応援や中小小規模事業者支援よりも、海外首都圏の大企業、開発資本への大盤振る舞いを加速させるものであることがはっきりしました。このような新京都戦略を進める体制づくりは認められません。
○最後に
最後に日本共産党京都市議団は、何よりも、市民の暮らし、地域に根差した中小小規模事業者の支援にこそ力を入れるべきだと考えます。大企業や開発資本に迎合するのではなく、その経済力ふさわしい社会的責任を果たさせてこそ、日本経済・京都の地域経済は健全に発展できるのではないでしょうか。このことを最後に述べ、反対討論とします。
(更新日:2025年03月25日)